耳を澄ましなさい。 おそらくあなたは、完全には忘れ去られていない往古の状態を、かすかに思い出すだろう。 それは朧げなものかもしれないが、まったく馴染みのないものではない。 まるで、とうの昔に題名を忘れた歌のようであり、あなたはそれをどこで聞いたかも少しも覚えていない。 その歌の全部ではないが、特定の人や場所や物などに付随してはいない旋律のほんの一部が、あなたと共にとどまっていた。 それでも、このほんのわずかな断片から、あなたはその歌の麗しさや、それを聞いたときのすばらしい情景や、その場に居てあなたと共にそれを聞いた者たちを自分がどれほど愛していたかを、思い出す。
奇跡講座テキスト 第21章 一 忘れられた歌 6.